【幕末】江戸っ子の夏バテ対策 今も変わらぬ神田明神前の「甘酒」

投稿者: | 2018年7月14日

暑い季節、夏バテを乗り切るために近年注目を集めている「甘酒」。点滴と同じようなビタミンやブドウ糖など栄養素を含むため「飲む点滴」ともいわれるほど栄養価の高い飲み物として知られています。江戸時代(幕末)には夏の飲み物として定着したこともあり甘酒は夏の季語にもなっています。先日、江戸の甘酒の味を求めて、神田明神前ににある江戸時代から続く2軒の甘酒屋さんで甘酒をいただいてきました。(2018年7月11日最終更新)

幕末の甘酒

幕末の民俗学者 喜田川守貞の著した近世風俗志には、甘酒について次のように記されています。

京坂は、専ら夏夜のみこれを売る。専ら六文を一椀の値とす。江戸は四時ともにこれを売り、一椀値八文とす。

「塵塚談」に云ふ、醴(あまざけ)売りは冬の物なりと思ひけるに、近比は四季ともに商ふことになれり。我等三十歳比までは、寒冬の夜のみ売り巡りけり。今は暑中往来を売りありき、かへつて夜は売る者少なし。浅草本願寺前の甘酒店は古きものにて、四季にうりける。その外に四季に商ふ所、江戸中に四、五軒もありしならん。

(現代語訳)関西では、夏の夜のみの販売で、一杯60円。江戸ではいつでも売っていて、一杯80円くらい。冬のものと思っていたけれど、最近は四季を問わずに売るようになった。少し前(20年くらい)までは寒い冬の夜のみ売って歩いていたものの、今は夏の暑い季節に売り歩いていて、逆に夜に売るものは少ない。浅草本願寺(東本願寺)の前の店は古くからあり、四季を通じて売っている。そのほかに四季を問わず売っているところが江戸市中に4~5軒くらいある。

浅草本願寺前の甘酒屋さんは、おそらくは今は残っていないと思われます(残念ながら探せませんでした)。

神田明神前の甘酒屋さん

平将門も祀られている神田明神の隨神門前の参道に江戸時代から続く2軒の甘酒の名店があります。

神田明神の隨神門

三河屋綾部商店

神田明神のすぐ前にある「三河屋」さんの創業は、豊臣氏が大坂の陣で滅亡した翌年で、徳川家康が亡くなった年でもある元和2年(1616)だそうです。徳川家発祥の三河のお店ということで、将軍家にも味噌や甘酒を納めていた由緒あるお店です。ということは、もしかして将軍もこのお店の甘酒を飲まれていたのかもしれません。

三河屋綾部商店

以下は、こちらのお店の説明がわかりやすく載っていた「東京都味噌工業協同組合」から引用させていただきます。

江戸三大祭のひとつで有名な神田神社。通称、神田明神の大鳥居をくぐり、右手にある「三河屋 綾部商品」。
徳川幕府について御用商人として、三河(今の愛知県)より江戸に来て、1616(元和2)年に創業。主に糀造り(米糀と麹の2種類)。その糀を使った味噌や甘酒、納豆を製造している。江戸時代には将軍家に納めていた。
宮中では、正月三が日の供進のお雑煮には、昔より白味噌を使用する定めであり、またその他の種々な料理にも使われていたため、宮内省(後に宮内庁)の御用達として九重白味噌を納めることとなる。
糀は“むろ”の中で4日目にふんわりと毛羽立ち、そのまま食べても甘いものが出来上がる。温度や湿度、菌を入れるタイミングなど、長年の経験と勘で微妙に変え、三河屋ならではの味になる。
今では仙台味噌、甘辛味噌、合白味噌、白味噌の4種類を製造している。全て無添加で昔ながらの製法で作る自然食品である。

出典: www.tokyomiso.or.jp

三河屋の甘酒

美しい乳白色の甘酒「延寿甘酒」は、350円。幕末の60円~80円よりは値がしますが、そんなことは気にならないとっても美味しい甘酒です。将軍様もお飲みになっていたかもしれない。また、意外と近くにある北辰一刀流の千葉道場の皆さんも稽古後に飲んだかもしれないなどと勝手な想像を膨らませながら江戸と変わらぬ味をいただきます。

暑い日に冷たい甘酒は体を元気にしてくれます。途中までいただいてからしょうがの粉を少し振りかけてみました。しょうが味の甘酒もこれまた美味です。2つの味を楽しめるのがうれしいですね。冬に温かい、しょうが味の甘酒もまた格別なものと思います。

飲み終えた後に、お店の方に「美味しかったです♪」とご挨拶すると「ありがとうございます」とにっこり微笑んでくださいました。こういうやりとりがとても心地よいですね。

<三河屋綾部商店>
住所   東京都千代田区外神田2-17-3
営業時間 月〜土 9:00~18:00
定休日  日曜日
電話   03‐3251‐7086

天野屋

神田明神参道への入口左横にあるのが「天野屋」さんです。1846年(弘化3年)の創業、江戸末期の切絵図を基に制作されたアプリ「大江戸今昔めぐり」で位置を確認すると、神田明神の前にしっかりと「天野屋」の表示があります。天野屋の下方に見えるのは林大学頭の文字「湯島聖堂」になります。学者さんが多く住んでいたところなので学問のあとに多くの学者が甘酒でのどを潤したのかもしれません。

江戸切絵図「天野屋」位置

天野屋さんは、向かって右側の入口がお土産店、左側の入口が甘酒茶屋となっています。

天野屋

甘酒の元になる糀は、天野屋地下にある土室(むろ)で作られているものだそうです。こちらは、明治34年の当時の土室の図で、現在は一部だけが残されて「床場(糀を育てるところ)」として使われているとのことです。

天野屋地下の土室(むろ)の図

さっそく天野屋さんの「明神甘酒」(450円)をいただきます。少しおしゃれなグラスで美味しそうな甘酒が出てきました♪創業時からの土室で育てらた糀で作られた明神甘酒。またまた、ここからそれほど遠くないところにある新撰組ゆかりの試衛館の方々ももしかしたら稽古後に立ち寄ったりしたかも??沖田総司も一度は飲んでいるのではないかななどと勝手な想像が膨らみます。

天野屋の甘酒

それほど大きくはない店舗の中を見渡すと、わたし以外は皆外国人の観光客が多く、おそらくは外国人向けのガイドブックにも江戸の甘酒としてかなり紹介されているのかなと思われます。天野屋さんのHPも外国語での紹介もあります。オンラインショップもあるので遠くの方も江戸の味を楽しめるかなと思います。

<天野屋>
住所   東京都千代田区外神田2-18-15
営業時間 月〜土 10:00~18:00
日・祝 10:00~17:00
定休日  4月~12月1週目の各日曜日
電話   03‐3251‐7911

とにかくも今年(平成30年)の夏は猛暑続きとなりそうです。夏バテ対策に効果のある甘酒を普段から積極的にとるようにしたいですね。わたしは、ヨーグルトメーカーで自宅で作っているのですが、やはり三河屋さん、天野屋さんの味には遠いです。江戸の深い味わいに少しでも近づけるように工夫をしたいと思います。

周辺案内図