深大寺城址を散策し、深大寺蕎麦に舌鼓

投稿者: | 2019年3月17日

暖かくなってきたこともあり、久しぶりに少し足を延ばして調布の深大寺に向かいました。その目的は、戦国期の扇谷上杉氏の城址深大寺城跡と江戸名所図会でも紹介された深大寺蕎麦のお店への訪問です。どこを訪れるにしても、その地に美味しいものがあると足取りも軽くなりますね。歩いた後にちょうど良くお腹も減って美味しいものがより美味しく食べられるのですから…。(2019年3月訪問)

深大寺城へ

初めての城址に向かうときにはいつもわくわくです。戦国期の城址があまり手を加えられずに残っているととても嬉しくなります。

小田原北条氏の圧迫を受けていた扇谷上杉氏は、江戸城を落とされた後に拠点とした川越城を守るために14世紀から使われていた深大寺近くの城「ふるき郭」を現在遺構の残る深大寺城の規模に重臣難波田氏に命じて再整備しました。側を流れる野川を天然の堀として国分寺崖線の地形を巧みに用いて北条勢を多摩川を防衛ラインとして食い止めることが深大寺城の使命でした。

城址図

国分寺崖線は、太古の昔から多摩川の浸食により削られた崖で、高低差を利用しての防衛が有効であり、湧水によりがけ下に「はけ」という湿地帯があることも多く、それがさらに攻城軍を悩ませることになります。

深大寺城湿地帯(水生植物園)

写真の右上が城の主郭方面になり、空堀に相当する場所は現在深大寺水生植物園となっているくらいの湿地帯です。ぬかるみが城を攻めにくくしています。

今は水生植物公園内の園路があるので、苦も無く第二郭、第一郭に向かうことができます。

第二郭は比較的広く数百ほどの軍勢が駐留できそうな規模があります。第二郭内をぐるっと囲むように土塁がありますが、多くが復元した土塁のようです。城址ファンとしては、どこが復元かを案内板などで記述してもらえたら嬉しいのですが…。

第二郭内(建物跡)

第二郭内には、建物跡が発見され、その跡が写真のように示されています。丸柱、板葺屋根で中心的な建物のみ床があったと考えられています。

復元土橋を渡って第一郭へ向かうと深大寺城址の碑があり、その後ろには小高い狼煙台跡があります。このあたりは戦国期のままと思われます。

深大寺城址碑

第一郭の虎口もようやくわかる程度ですが、再整備より趣がありますね。

虎口

深大寺城は、川越城を守るために多摩川で北条勢を食い止めることが使命でしたが、しかし北条氏は深大寺城へは抑えの兵を置きつつ、迂回をして直接川越城を攻め落とします。この地は北条氏が治めることになり、深大寺城はその使命を終え、以後は城としては用いられなかったようです。そのため、北条氏の手が入らない扇谷上杉氏の城跡として残ることとなり、その意味でも貴重な城址と言えるでしょう。

よく深大寺城と同じようなつくりとして比較される城として片倉城がありますが、片倉城は基本形は同じとしても、北条氏の手が加えられ北条氏の築城術が駆使されています。

片倉城も深大寺城周辺も「カタクリ」の希少な群生地となっています。片栗粉は現在はジャガイモの澱粉を用いますが、江戸期から明治まではこのカタクリの地下茎から作られていました。扇谷上杉氏が籠城戦に備えて栽培していたというのは考えすぎかもしれません…。

カタクリの花

深大寺城の歴史について、もう少し解説板が充実すると嬉しいです。このお城がどのような目的で作られていたのかを訪れた人が知ることができるといいなぁと思います。さて、ちょうどお昼時になりましたので、江戸期から有名な深大寺蕎麦を食べに行きたいと思います。

深大寺蕎麦

深大寺蕎麦は、深大寺周辺の土地が痩せていたために蕎麦の栽培が行われ、深大寺では来客の際に蕎麦によりもてなしをしたことが始まりと言われています。国分寺崖線の崖上の水は、湧水として崖下に流れ出るため、崖上は米作に向いておらず、蕎麦などの栽培が奨励されたのかもしれません。

蕎麦を打つには良質な水が必要なことから、湧水が豊富な深大寺周辺はその面でも蕎麦に適した土地でした。

現在の蕎麦のように細く切った蕎麦切りが普及して始めていた元禄時代に、深大寺の総本山上野寛永寺の門主だった公弁法親王が深大寺で食した蕎麦をとても気に入り、献上蕎麦として名が高まりました。

江戸時代後期には、幕府御家人で狂歌師である大田南畝(蜀山人)が巡察中にこの蕎麦を気に入り、宣伝したことでさらに名声を得て、江戸名所図会でも紹介されています。

江戸名所図会「深大寺蕎麦」

江戸名所図会では、小坊主さんが御蕎麦を運んでいます。天保年間には、まだ商売としてのお蕎麦屋さんの蕎麦ではなく深大寺のもてなし蕎麦であったようです。

現在、深大寺周辺のお蕎麦屋さんは20数店舗あるそうですが、江戸期からのお店は文久年間創業の元祖嶋田屋のみです。今回は、この嶋田屋さんで御蕎麦をいただくことにしました。

深大寺蕎麦元祖嶋田屋

注文したのはなめこ蕎麦。とても美味しくいただきました。つけ汁が甘くて個性を感じました。お蕎麦もコシがあります。

今回いただいたなめこ蕎麦

今は、深大寺産のそば粉ではないそうですが、深大寺城第二郭など深大寺周辺でのそば栽培も復興が進んでいるようです。いつか名店で深大寺産のそば粉を用いた蕎麦を食べれると嬉しいですね。

周辺案内図